それでも、まだ。
『何をそんなに焦っているの?セシア。』
隙のない構えをしたまま、レンは不意に口を開いた。
『――…!』
セシアもまたじっと動かずに黙ってレンを見据えた。
その様子にレンはしばらく黙っていたが、セシアが何も言わないのを悟ると少し視線を外してふぅと溜め息をついた。
『…確かに記憶もないし不安かもしれないけどさ。セシアは本当に強くなったよ?だから焦らなくても―…』
『――…なら、』
『え?』
セシアの口が開いたのを見て、レンが改めてセシアを見ると、セシアは俯いて木刀の先をレンに向けたまま続けた。
『それなら、どうして教えてくれないんですか…?』
『…………。』
セシアの持つ木刀はカタカタと震えている。
――強くなったと認めてくれるのなら。
『どうして私は…何も知らないんですか…!?どうして…知れないんですか!?』
『…………。』
セシアは声を張り上げたが、レンは顔色ひとつ変えずにセシアを見つめていた。
無言の答えにセシアはギリッと歯を食いしばると、そのままレンに向かって地を蹴った。
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