それでも、まだ。
『はぁぁぁぁっ!!』
今までの打ち合いの中で一際大きな声を上げたセシアは、辺りに暴風を巻き起こしながらレンに襲い掛かった。
そしてレンを打てたと思った瞬間――…。
『…感情のままに動くのもよくないよ。…Blave・shut。』
レンはセシアの背後に回っていた。
『なっ…!……うぁっ!』
そして次の瞬間にはセシアはレンの突きによって吹き飛ばされていた。
『……っ…はぁっ…。』
余りの威力にセシアが立てずにいると、レンが近くまで歩いてきた。
そしてセシアと同じ目線になるようにしゃがみ込むと、ポンッと掌をセシアの頭の上に置いた。
『……ごめんね。』
この謝罪が何に対する謝罪なのかはセシアには分からなかった。
だが、レンの表情は、とても悲しそうだった。
セシアはまた、胸が締め付けるような気持ちになった。
――どうして、謝るんですか?
そう聞きたかった。
でも、聞いてはならない気もした。いや、まだ、聞くべきではないのだ。セシアはそう感じた。
セシアが黙って俯くと、レンの掌はしばらくセシアの頭を撫でていたが、フッと笑うと手を離し、立ち上がった。
『立てる?早く真理ちゃんのとこに行こうか。救急箱を持って待ってるみたいだし。』
レンにそう言われて神田の方を見ると、神田はオロオロしながらこちらを伺っていた。
『……はい。』
そしてセシアも少し笑うとなんとか立ち上がった。
――いつか必ず、自分の身に起きたことを―…!
新たな決意をして、セシアはレンと共に神田たちの元へ歩いていった。
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