それでも、まだ。

――――――


『い、痛い痛い痛い!!』


『ちょっとの我慢だから大人しくしててね。』


セシアとレンの手合わせを見た後、神田はセシアの手当をしていた。


『いや分かってるけど…っ!痛い痛い!!もっと優しく…っ!』


『……こう?』


『…いやいやいやいや!!それも痛い!!』


『…………。』


『痛たたた!!ちょ、神田、もっとゆっくり……っ!』




『…早く終わった方がいいでしょ……?』



有無を言わせない笑顔を向けた神田に、セシアは一瞬で顔を引き攣らせると、歯を食いしばって耐えはじめた。




『…真理ちゃんってたまに凄く恐くなるよね。』


『………あぁ。』



レンとジルの呟きをよそに、神田は神田で考えを巡らせていた。




――あの写真を見せたい。


しかし、今セシアに見せても、何も分からないだろう。

むしろ、混乱させてしまうだけだ。

だからといって、他の幹部たちに聞くのも気が引けた。


きっと何も教えてくれないだろう。今は。


―…でもいつかセシアの記憶が戻ったら――…。



『……神田?』



いつの間にか手が止まっていた神田をセシアが不思議そうに見つめていた。



『…あっ、ごめんね。…そういえば、セシアは何の能力なの?』


『え?…あぁ、私は風の能力だ。』


『風かぁ…。セシアに似合ってるね。』



神田が笑顔で言うと、一瞬セシアは驚いた顔をしたが、直ぐに嬉しそうに笑った。


『…はい、手当終わりっ!』


神田もなんだか嬉しくなって声を明るくしてそう言うと、レンが声をかけてきた。



『終わったー?真理ちゃん、僕お腹すいたな〜。』


『あ、はい。今から何か作りますね。……でも、ちょっといいですか?』


神田はさっきから気になっていた方を指差した。



『なんでシキさんはあそこでずっと倒れているんですか?』


『『………あ。』』


セシアとレンが同時に声を上げると、シキはゆっくりと起き上がった。


『フフ、やっと気付いたか。今までの悲しさは計り知れんで。真理の優しさに感謝や!…ということで、今度は真理にだーい……ブベラァぁぁぁぁ!!!』


また全力で走ってきたシキは、今度はジルに思いっきり木刀で殴り飛ばされたのであった。



…そのときのジルの表情は凄く真剣だったとかなんとか。



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