それでも、まだ。


そんなこんなで2人は今漆黒の森沿いを市場に向かって進んでいる。


時間的には昼前の時間帯だが、相変わらず空は暗くて夜のようだ。

…実際此処は夜の世界なのだが。


『改めて見ると、この世界って結構広いんだね。』


神田はきょろきょろしながら言った。その表情は好奇心で満ちている。


『…あの時以来か?外に出るのは。』


『うん、そうなるかな?』



あの時とは、セシアと神田が出会ったときのことである。


出会ったときは状況が状況であまり周りを見ていなかったのだろう。今は飽きず視線を至る所に移している。




『…確かに広いな。漆黒の森なんて、どこまで続いているのか分かりや……っ!!』


セシアはバッと漆黒の森の方を見て、咄嗟に身につけている刀に手をかけた。



――今、誰かから見られていたような……?



『…セシア、どうしたの?』


セシアの異変に気づいた神田が不安そうにセシアをじっと見つめた。



セシアは漆黒の森の方へと意識を集中させたが、すでに先程までの気配は消えていた。



――…気のせいか……?



『…セシア?』


『…いや、何でもない。早く行こう。』



セシアが神田に笑顔を向けると、神田は少し納得のいかないような表情だったが、すぐに笑った。


――気を使ってくれたのかもしれない。



神田はアヴィルさんから貰った地図に視線を落とすと、前の方を指差した。



『多分もうすぐ……あれかな?』

『…市場か?』



セシアが尋ねると、神田はふるふると首を振った。



『ううん、その前に、……墓場の中を通り過ぎなきゃいけないみたい。』



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