それでも、まだ。
『……え?』
神田の指差した方を見ると、そこには。
『…いやいやいや。』
これまた限りない墓場が広がっていた。
薄暗いということもあって、気味悪さが一層際立っていた。
引き抜ける風がセシアの身体を急激に冷たくしたような気がした。
というか、何かが出そうな雰囲気がものすごくしている。
――いや、断じて怖いわけではない。断じてない。
だが、固まって動けずにいるセシアとは対称的に、神田は既に墓場の中に進んでいっていた。
『いや待て待て待て待て!!』
セシアは慌てて神田に声をかけた。
『…どうしたの?』
神田は不思議そうに振り返った。
『いやいや危険過ぎるだろ!なんでこんなに墓があるんだ!?』
『え…そりゃあ墓場だし。』
『それにしても広すぎだし!暗過ぎだし!…神田、墓場は通らずに市場に行こう!ね!』
『え…でもそうしちゃうと3日かかっちゃうらしいし。もともと暗いし。それに墓場を通る道しか教えてもらってないよ?』
『…………。』
『…セシア、もしかして怖いの?』
『…いやいや、そんなことないからな。何か出てきそうとか、不気味で怖いとか思ってないから!』
『……………。』
神田は呆れた顔をセシアに向けると、再び背を向けて墓場の中へ歩きだした。
『ちょ、待って!神田!』
結局セシアも神田の後を慌てて追って墓場へと足を踏み入れたのであった。
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