それでも、まだ。


『…………。』


『……………。』


『………………。』






『…………ねぇセシア。』


『………な、なに?』


『…ちょっと近いよ?』


『………すまない。』



墓場に入ってから、セシアは神田の後ろにピッタリとくっついて歩いていた。



空は曇り、月が隠れてしまい、ますます辺りは暗くなっていた。


唯一の光は、神田が持っている懐中電灯の光くらいである。



『セシア、大丈夫?…なんかさっきから無言だし。』


『……大丈夫だ。』


セシア自身、今すぐにでも帰りたい衝動に駆られているが、神田がいるためそうするわけにもいかず、必死にこの薄暗い道を通っていた。


…その結果神田にひっついてしまっているのだが。




セシアが少し神田から離れると、神田はふぅと息を吐き、何やらポケットから何かを取り出した。



『はい!』


『…?』


セシアが差し出した掌の上のものを見ると、そこには小さな飴玉が可愛らしく乗っていた。


『飴……?』


『うん!とっても甘いから、セシアも気に入るかなと思って。』



神田はにこにこ笑いながらセシアに手を差し出している。



――神田なりに、セシアをリラックスさせてくれようとしているのだろう。



神田のさりげない優しさを、セシアはゆっくりと受けとった。



『…ありがとう。』


『…ふふ、どういたしまして。まだいろいろ味があるんだよ。えーっと……あっ。』


神田がポケットからまた飴玉を取り出そうとしたとき、同時に小さな袋がポタリと落ちた。


アヴィルが持たせてくれたお金が入っている袋である。



『よいしょ。…そういえば、お金も私たちの世界のと一緒なんだね。』


神田は袋を拾い上げ、中に入っているお金を確認し始めた。


セシアも辺りを見回してお金が落ちてしまっていないか薄暗い中を調べ始めた。




……そのとき。



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