それでも、まだ。
――ガシャンっ!!
『きゃあ!』
『…神田!?』
何かが落ちた音がしてセシアが慌てて神田の方を見ると、懐中電灯が地面に落ちてしまっていた。
しかもそれはセシアにとって逆光の位置になっていて、神田の姿がセシアにはほとんど見えなかった。
『ちょ、何するの!待って!』
『待て神田!動くな!!』
神田がどこかに行くような足音が聞こえてきてセシアは慌てて呼びかけた。
…が、セシアの叫びも虚しく、神田の足音は遠ざかっていく。
そして急いで懐中電灯を持って神田が居たであろう方向を照らしたが、もう既に神田は姿を消していた。
『…おい、神田…?』
セシアが至る所に光を当てたが、神田の姿は愚か、気配さえも感じられない。
――まるで墓場の静寂に飲み込まれてしまったかのように。
セシアは冷や汗が背中を流れるのを感じた。
『と、とりあえず組織に…れ、連絡………!』
そう一人呟き無線を取り出したとき。
――ガサガサ…
『――!?』
咄嗟に懐中電灯を向けるとそこには。
『…にゃー…』
『ね、猫…?――…!?』
無線を持つ手がカタカタと震えだしている。
光に照らされて光る猫の瞳は。
『…う、嘘だ……!』
本来2個しかないはずの瞳の数は。
『な、んで…!?』
なぜか3個に増えていて。
『…にゃー…!』
『……ぎゃあぁぁぁぁ!!!』
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