それでも、まだ。
―――――――
『おっそいなぁ〜。』
レンはジルの部屋のベッドでゴロリと転がりながら呟いた。
『市場に着いたら一応連絡しろと言ったんだが……。』
ジルは窓際に立って漆黒の森の方向を眺めながら心配そうに言った。
『こっちから連絡してみたら?』
『してみた。…でも、繋がらないぞ。』
その言葉に、レンは無表情でムクリと起き上がった。
『……迷ったのかな?』
『…アヴィルさんが地図を渡していたから、それはないと思うんだが…。それに、そうだとしても、無線くらい出るだろう。』
『それもそうだね。じゃあ、どうしたかな〜。…あ、ジル、何か飲み物取ってきて。』
『……自分で取りに行け。』
呆れた顔を向け、再び窓の外へと視線を戻したジルに、レンはちぇっと文句を言いつつ、ベッドから降りて、飲み物を取りに行った。
このとき既に、神田とセシアが出かけてから1時間が経過していた。
普通に行くと30分もあれば着くような場所であるはずなのだが。
今、幹部は2人以外仕事に出かけており、いつもに増して、幹部フロアは静かだった。
レンは少し胸騒ぎを感じながら台所に行き、ジルの分も取って再び部屋に戻ってくると、ジルはまだ窓際に立っていた。
手には無線を握り締めている。
――やはりジル自身も何か違和感を感じているのだろう。
ジルは言葉は少ない方で表情にもあまり出さないので幾分分かりにくいが、レンにはジルの考えているであろうことがよく分かった。
…それは逆も然りでもあるが。
なんせ15年の付き合いだ。
…あれ?16年だっけ?
『………レン。』
『ん?』
ジルは視線を外から動かさずに口を開いた。
『様子を見に行ってくる。』
『……僕も行くよ。』
――…考えることも似ているらしい。
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