それでも、まだ。


――――――

『――…捕まえたっ!』


神田は息を切らしながら自分を翻弄した小さな白い泥棒を両手で掴んだ。


『も、もうっ!……はぁ…、何度……見失いかけたことか…はぁ…。』


『…にゃー…』



神田は肩で息をしながら手の中で捕まっている真っ白な猫を見た。

白猫は暴れもせず、ただじっと神田を見つめていた。


神田はふぅと息を吐くと、手の力を少し緩め、白猫をゆっくりと撫でた。


『…ほら、袋を返して?それは大切なお金が入っているの。』



神田が優しく撫でながらそう言うと、白猫は口に加えていた袋をポトリと落とし、神田に擦り寄ってきた。白猫の喉がゴロゴロと鳴っている。



神田は袋を拾い上げると、安心したようにペタンと座り込んだ。


『はあぁ〜〜。よかったぁ。取り戻せて。…でもセシアとはぐれちゃったな…。心配してるかな。』




――袋を取り出したあのとき。

いきなりこの白猫が現れたと思ったら、袋を神田から掻っ攫い、逃げてしまったのだ。


その拍子に持っていた懐中電灯を落としてしまったが、神田は直ぐに猫を追いかける方が大事だと思い、薄暗い中必死にこの白猫を追いかけた。


『この光る石のお陰で見失わずにすんだけどね…。』


『…にゃー?』


白猫の首には、石のついた首輪がついていた。この石がキラキラと光っていたため、神田は白猫を追跡出来たのだ。


『綺麗な石……。』


その石は白猫の目と同じように、紅く光っていた。


遠くから見たら、目の数が3個もあるように見えるかもしれない。


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