それでも、まだ。
――それにしても。
神田は立ち上がった。
足元では白猫が神田にずっと寄り添っている。
『ここは何処だろう…?』
神田は辺りを見回したが、先程までの風景とは大きく異なっていた。
…随分奥深くまで入り込んでしまったらしい。
というか、墓場をいつの間にか抜けてしまっていたようだ。
後ろを振り返ると限りない墓場が広がっているが、前方は視野が開けてこれまた限りない野原が広がっているのが薄暗い中でも分かる。
『…あ、じゃあもしかして…!』
神田はポケットに入れていた地図を取り出して広げ、しゃがみ込んで白猫の首元に近付けた。
『にゃー?』
白猫は不思議そうに神田を見上げている。
『やっぱり!』
神田は白猫を撫でながら嬉しそうに声を上げた。
『市場が近くにある!…セシアも、もう居るかもしれないな…。』
神田は再び立ち上がり、視線をキョロキョロと動かした。
…すると、視界の隅に、ぼんやりとだが、建物らしきものがあることに気が付いた。
神田は直ぐに駆け出した。後ろでは、白猫がついて来る気配がした。
そして建物の目の前まで来ると、神田はしみじみとその有様を観察した。
建物自体は古く、風に揺られてはカタカタと今にも壊れそうな音を響かせている。
神田はその不気味な様子に少し戸惑ったが、ゴクリと喉を鳴らすと、扉に手をかけ、思いっきり引いた。
『こ、こんにちは!……!?』
そして少し明るい建物内を見渡すとそこには。
『おやおや、お嬢さんじゃないか。久しぶりじゃの。』
灰色のマントを被った老人が座っていた。
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