それでも、まだ。




『……はぁ…はぁ…』



どのくらい走っただろうか。



さすがにセシアも息切れしてきたとき、自分の後ろの気配がなくなったのを確認してセシアはた立ち止まった。



セシアの目の前にあるのは闇に包まれた限りない森。…墓場を抜けてしまったようだ。



『…漆黒の森……?』




いや漆黒の森であることは確かなのだが。



『道なんかあったか…?』



セシアは息を整えながら森の中に続いていく道を見つめた。


てっきり戻って来てしまったのかと思ったが、そうではないらしい。見慣れない風景だ。




――漆黒の森は危険すぎて、Seakでさえも、暮らしていくことは不可能であり、もはや無法地帯の状態だ――…。



上司の言葉が頭によぎった。




それならば、何故?


この道は何処に続いている?





道の奥、もとい森の中をふと見遣ると、闇の中に、よく知る背中が。



『マ、ダム………?』



どうしてあんな所にいるのだろう。



マダムはセシアに気づいていないのか、どんどん森の中へ入って行く。


――とても嫌な予感がする。



セシアはマダムを追いかけようと漆黒の森に足を踏み出そうとした瞬間。



――ガシッ



『―――!』



何者かがセシアの腕を掴んだ。



…しまった。前ばかりに気を取られていて後ろからの気配に気づくことが出来なかった――…。



…幸い掴まれたのは利き手ではない左腕だ。なんとか右腕だけでも刀が抜けないことはないだろう。


セシアはすぐに刀を抜けるようにしながらちらりと後ろを見遣った。



『……あ。』



だが、セシアの予想は外れ、そこには心配そうな顔をしたジルがいた。



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