時を止めるキスを


フラレた現場を目撃されて始まったこのフシダラな関係も、早2週間が経過していた。


社内でも評価の高いドラゴンが多忙なのは百も承知。でも、果たして仕事だけが理由だろうか?


私たちは夜に会社の外で待ち合わせ、淡々と食事を済ませたあとはセックスに興じる。


疲れている時は、そのままホテルに泊まって眠ってしまう。そして早朝に現場解散し、自宅で着替えてから出社。その後は、何食わぬ顔で仕事をこなしている。


こうして呼び出されたのは、この2週間のあいだで今日を含めて4回目。


今回もやっぱりルームサービスで頼んだ食事もそこそこに、ただキスして抱き合って、会話は後回し。——まさに、セフレを絵に描いたような関係。


だから、余韻に浸りたくない。一緒に泊まりたくないなんて本音が、眠気を薄れさせているのかも。……これが私に残っている、せめてものプライドか。


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