時を止めるキスを
しかも、お邪魔した時には自分のことに必死で気づかなかった、高級ブランドのハイヒールまで目に留まってもう苦笑い。
一介のOLが大枚を叩くほどの高級靴を置けるところは、信頼して預けられる相手しかいないと。
私はこれで、寝取り目的の最低女に成り下がった。その事実に直面し、ドラゴンに挨拶をしたのち逃げるようにマンションをあとにした。
元彼のことを、“浮気男”と罵った女がすることじゃない。自分がどんな神経をしているのか分からなくなった。
ドラゴンに絆されたとはいえ、その後も関係を続行中の私にはすっかりモラルが欠如していると。
今回も肌を重ねる前に聞こうとしたのに、いざ問い詰めようとすれば及び腰になってしまう。
募る罪悪感と彼の答えから逃げるようにして、今日も私は目を閉じることを選んでいた……。
「——い、……かわ、」
「……んー、」
あたたかくて真っ暗なところで佇んでいると、どこか遠くから聞こえてくる声。