時を止めるキスを
チーフはスーツに着替え終えていて、髪は乾き晒しの状態。そしてレンズの奥の瞳を腕時計に落とし、小さく溜め息をついた。
かたや声に釣られて飛び起きたものの、会社で接する姿を前にして自らの姿に気恥ずかしくなる私。
一晩ですっかり糊の取れたシーツを掴むと、それを胸辺りまでちゃんと覆って隠れることに。
「今さら隠す必要もねえだろ」
そんな行動に対し、目の前の男の反応は冷ややかなもの。
「……恥じらいを忘れたら女の終わりだ、ってよく友だちに言われるので」
「何だそれ」と、私の発言には眉根まで寄せる始末。
きっと呆れたのだろう。――“ただのセフレだろ”と言いたげな様子に、胸にツキンと小さな痛みを覚えた。
「そ、それより!私のことは良いんでチーフは早く行って下さい。
今日って朝イチで全体会議がありましたよね?」
「ああ、じゃあ先に行く。
あ、チェックアウトなら済んでるから、そのまま出て構わないぞ」