時を止めるキスを
「分かりました。お金はあとで」
「いらない」
「そ、うですか。すみません」
キッパリと線引きをされ、お礼を込めて頭を下げるほかない。……セフレの対価かと嘲笑しなければ救われない。
私が顔を上げると視線が重なったが、その瞳はどこか苛立ちを含んでいてたじろいでしまった。
結局タイガーは無言で背を向け、私は慌てて起き上がり身体にシーツを纏って静かにその後ろ姿を見届けた。
ひとりぼっちになった部屋には静寂が包む。バサッと勢いよくシーツをベッドに投げると、素っ裸のまま恥じらいゼロでシャワー・ルームに向かった。
水滴の残るそこは、あの男がいた証がまだ残っていた。俯いて扉を閉めると、今日も虚しさと後悔だけが渦巻いていく。
三浦くんと話していた時に、男から呼ばれたあの瞬間。
ちょっとだけ、チーフが本気なのかと思ったけど。それは恥ずかしい勘違いだったと、数時間後に知らされた。