時を止めるキスを
基本的に交代で食事を取る決まりもあって、これまで一緒に食べた回数を数えた方が早い。
「今日は久々に定時退勤しようよ」
「わっ、良いんですか!?」
また常務に同行する機会も多い彼女と違って、第二秘書の私はデスクワーク中心。
そんな彼女の働く姿を見ていると、努力こそすべてだと感じ取れる。
私ももっと頑張らねばと思う反面、この会社に骨を埋める覚悟も持てず、まさに宙ぶらりんだ。
「ええ、じゃあお昼にね」と笑顔を見せたのち自席に戻っていた柚さんの後ろ姿は、今日も凜としていた。
思い返せば、これがそもそもの発端になった――と、気づくのはもう少し先のこと……。
午前の仕事を終えて、私と柚さんは結構美味しいと定評のある社員食堂に向かう。そこに到着すると、同じように昼食を求める社員で混雑していた。
メニューを決めた私たちも長い列に並ぶ。ちなみに私は悩んだ結果、メインが焼き魚というヘルシーな和定食Bを選んだ。
一方の柚さんは、「しょうが焼きのA定食!」と見事なまでの即断。
「肉って気分だもの」
「羨ましいです……。私、最近ちょっと太って」
「どこが?」と彼女に聞かれ、お腹をさすりながら苦笑した。