時を止めるキスを
注文した料理が乗ったトレーを受け取り、周囲をきょろきょろする。
食堂自体は全社員が座れるほどの席数があるため、ちらほらテーブルが空いていた。
柚さんの一声で、最も出口から遠くて敬遠されがちな奥まったスペースを目指して進んで行く。
その途中でも人気の彼女は何人かに声を掛けられたが、「今日は藍凪ちゃんとふたりで食べるからー」と笑顔で断ってしまう。
「良いんですか?皆さん」
「うん、全然。それとも、ふたりじゃ嫌?」
「とんでもない!」と、頭を振ればニッコリ笑ってくれるから、人気の理由も頷ける。
到着した先にある目的のテーブルは4人掛け。私たちはトレーを置いて椅子を引くと、向かい合って食事をとることに。
その刹那、「藍凪ちゃん」と向かい合う柚さんに呼び止められて顔を上げた。
「どうかしましたか?」
「まどろっこしいの嫌いだから、単刀直入に聞くけど――付き合ってるよね?」