時を止めるキスを
淀みのない声で脅しをかけてきた柚さんは、やっぱり人生経験が違う。
こんな場面でも余裕を見せて笑えるなんて、私にはとても出来ないと悟った。
「よく意味が、」と言いかけたものの、トドメを刺されてしまった。
「私の同期の独身――って言えば、認めてくれる?」
何もかも知っていると言わんばかりの態度に、もはやぐうの音も出ない。
ただ押し黙って動向を窺っていると、直後に視線を落とした彼女の目はある一点を捉えた。
それは薬指に今も塡まっているリング。――そう、私が未だ外すことが出来ずにいる、タカシからの贈り物だった。
唇を噛んでいると、視線を戻して再び真っ直ぐにこちらを捉えて離さない柚さん。
ついに観念した私は、「あの、」と自分から話を切り出すことにした。
「……いつ、気づきました?」