時を止めるキスを


そうして二股を掛けられたのち、あっさりと捨てられたのが私の最新の恋愛失敗談である。


もうひとつ、忘れたくないこと。それは浮気された女の立場が如何に惨めであるか、だ。


これまで女友だち数名が浮気をされて、仲間内で慰め合う機会が何度かあった。もちろん私も、かつての恋愛に疲弊した時には幾度と救われている。


そんな私たちの中で飛び交ってきた、浮気や不倫というフレーズたち。でも、心のどこかで自分とは無縁だと思っていた。


“相手がいるのに別の誘惑にそそられるのは許せない。

だから私が彼に浮気された時は、すっぱり振って相手の女に差し出すつもり。——ろくでなしは不要ですからどうぞ、ってね。”


お酒を片手に力説していたあの瞬間を、今となっては真っ黒に塗り潰したい。


いざ自分が当事者になると、存在意義まで否定された気分に苛まれたのだから。


さらに彼が最後に告げた、“ごめん”の一言はそんな思いをより一層濃くさせた。


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