時を止めるキスを
いざこざに巻き込まれるのは面倒だったくせに、やっぱりプライドはズタズタに傷ついていた。
確かに、別れから学ぶことはたくさんある。終わりよければすべて良し、というのは本当だとつくづく感じるこの頃だ。
こうして消化不良を続けているのは、ずるずると引き摺る自分から抜け出せないからなのか……。
「お疲れさまー……って、藍凪ちゃんひとり?」
「あ、お疲れさまです。
その、どうしても終えたい件があるので」
メールに記載されていた約束の21時まで、あと15分ほどに迫った頃。
昨日、急遽キャンセルしたスケジュールをこなすため、会議終わりの常務に同行していた柚さんが秘書室に顔を覗かせた。
「まだ残る?手伝うよ?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
さすがにこの時間帯まで気を張り続けていれば、疲労もピークに達するはず。笑顔を見せる彼女からもそれが伝わってきた。
それでも勘は鈍っていないのか、「何かあった?」と尋ねられた。