時を止めるキスを
彼女いわく、私はかなりのコーヒー中毒らしいが、本当にその通りだと思う。
「あー……なんか糖分欲しいかも」
ただし、あまりにコーヒーを飲み過ぎたせいなのか、今や味にもちょっとうるさくなってしまった。
このサーバーの味はやっぱりカフェと比較するのは失礼だが、そんなに美味しいものではない。
ブラックのキリリとした苦みを感じるのも好き。でも、元来の甘党としてはクリームがあれば最高。
それが生クリームであれば完璧だと、特に疲れている日は思ってしまうけど……。
「コーヒーはブラックだろ」
「――うわっ!」
誰もいないとすっかり油断しきっていた室内。そこに水を差すように響いたのは、すっかり耳慣れたあの低くて鋭い声。
背後で響いたその声色に驚いた私は、手にしていたカップを危うく落としかけそうになった。
慌てて両手でバランスを保つと、そろりと窺うように給湯室の出入り口を振り向いてみる。
「なんだその反応」