時を止めるキスを
「誰だってびっくりしますよ!」
「時間だから来たのに」
平常心でいようとまるで呪文のように言い聞かせていたのに、ドラゴンと顔を合わせた瞬間。そんなものはどこかに消えてしまっていた。
夕方よりもラフに映るチーフの眼鏡の奥の眼はいつもと同じで、真っ直ぐこちらを捉えて離さない。
「そうですね。どのようなご用件でしょうか?」
「わざとらしい」
その眼差しに捕われたが最後、私の心は途端にざわざわと落ち着かなくなってしまう。
「ええ、今日は“部下として”待っていましたので」
それでもどうにか臆することなく返せば、チッと舌打ちしたチーフは眉根を寄せて私を睨んだ。
今日はやっぱり……、と抱かれたくなる浅ましい欲がふつふつと沸くなんて、私のフシダラな感情はどうかしている。