時を止めるキスを
真夜中のオフィスくらい不気味に感じるものはないといえる。
暗がりの嫌いな私は、今後もきっと克服出来そうにない。それどころか、今後は深夜の職場がますます嫌いになりそうな気がした。
これで“もう大丈夫です”と、どの口が言えたのだろう?
必死に取り繕って男と対峙する私は、この静寂にさえ飲まれてしまいそうなのに。
なおも視線を逸らさない男こと、瀧野チーフの表情からは何も読み取れないから辛くなる。
こんな気持ちになってしまう前に、もっと早く伝えるべきだったと渦巻く後悔。
この時間が途方もないほど長く感じて、胸がキュッと締めつけられる。
それもこれも、自分の仕打ちが招いた罰か……。
「……あの、私はこれで、」
まるで窮鼠(きゅうそ)のように追いつめられた私は、情けない語調で冷たい視線からついに俯く。