Blood Smell

最悪だ


足が折れたことより
怪我よりなにより



先生に婚約者がいて
その二人が愛を確かめようとしてる


私の彼氏なのに



先生は私のこと好きなんじゃないの？


離さないって行ったじゃん！


イヤだよ


せんせぇ…



｢俺はお前との婚約を解消する…。｣



え―…？



｢な、何を言ってるの？｣


エリザベスが一気に混乱と不安に満ちた表情にかわる

｢昨日の夜、ロンドンに飛んでお前の両親に許しを得た。
かなりご立腹だったがな。
もちろん、俺の両親は納得済みだ。


だから
お前はもう今日から俺のフィアンセじゃない。


次に冴に手を出したら
容赦なく
お前を殺す。｣



エリザベスは落胆した
膝から崩れ落ち
先生の言葉を理解することを拒否しているかのように頭を小刻みに左右に動かしていた



先生が私に向き直ると
そっと
私を御姫さまだっこで抱き上げる


｢痛っ！｣


折れた左足に激痛が走った

｢悪い。｣

申し訳なさそうに
ガラス細工に触れるように慎重に私を抱き締めなおす

顔には苦しみと愛しさがにじんでいた


｢間に合わなくて、すまなかった。
そばを離れるべきじゃなかった…。
冴にこんな怪我をさせるなんて。｣


もうスピードで森を駆け抜ける

振動もなにも感じない
ただ唯一感じる
先生の冷たい息と悔しさ


先生の胸の中は何の不安もない



私は
ゆっくり瞼を閉じた


そして
体を先生に預けたまた
深い眠りに落ちた