Blood Smell
「冴…。」


気が付くと
先生の腕の中にいた


強靭で固く
冷たい胸に抱き寄せられる


「俺の事…嫌いになるか?」

振ってきたのは
小さな声だった


「…。」

何も言えない私

ぎゅっと
腕に力がこもった


「戦争を避けるために
斎藤を見殺しにしてしまう…

俺を…ヴァンパイア一族を軽蔑するか?」



先生の声が
頭に響いた



先生の事は好き

何があっても

この気持ちは変わらない

でも

“斎藤を見殺しにしてしまう…”

この言葉が
魚の骨みたいに奥でひっかかかって
飲み込めない…
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