Blood Smell
家に帰ってからも
川合クンの言葉が頭から離れなかった…


ベッドに座り込み
呆然と出窓越しに半月を見上げていた


川合クンといると
心が和んだ

先生のことも考えないくらい楽しい…


好きな人を忘れていくのは
こんな感じなのかな――…

ゆっくり立ち上がって
ベランダから月を見上げた

今度は
半月が少し滲んで見える



「――…先生」

夜空に向かって
そっとささやいた


走馬灯のように先生を追いかけていた日々が蘇る

あの頃は毎日が
あっという間に過ぎていてキラキラに輝いていた


どうしよう

名前を呼んだら
ハッキリと解ってしまった

「先生―…好きだよぉ…」

溢れ出した涙が
頬をつたった




「じゃぁ、何であんなこと言ったんだよ?」

その時
突然誰もいないはずのベランダの隅から声が聞こえた
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