Blood Smell
私はギョッとして声の方向を見る

暗闇の中から出てきたのは……

桑折先生!?

そこには白衣を着ていない私服姿の先生が立っていた

驚きのあまり涙も止まった

「…な…んで?」

声もマトモに出ない

先生は躊躇うように
私に近づいた

手を伸ばせば届く距離
先生の瞳が私を見つめる…

「俺がもし…人間じゃなかったらどうする?」

先生の瞳がみるみるうちに燃え上がるような
禍々しい赤色になり

髪は月明かりに照らされて光輝く金髪になった


あの日
公園で見た人がそこにいた

「やっぱり…先生が助けてくれたのね!」

その事実が嬉しくて思わず飛び上がりたくなった


でも
すぐにその熱は目の前の光景に奪われてしまった


「…その牙―…」

先生が牙をむき出しにして私を睨んでいた

そこにいたのは
もう私の知っている先生じゃなかった…

全身に
恐怖と戦慄が駆け巡る
鼓動が煩く聞こえた

そして背中にゾクリと冷たいものがつたった



そこにいたのは

「……ヴァンパイア…!」
私は確信と恐怖に混じった声で言った
< 37 / 303 >

この作品をシェア

pagetop