Blood Smell
先生はニヤッと不敵な笑みを浮かべる

そして
弁当の蓋を開けた

色とりどりのおかずと
三色のおむすび

「うまそう。」

匂いをかぐまねをして
手で
卵焼きを一つつまんで
そのまま口に入れた

二回も噛まないうちに
先生はゴクリと飲み込む

「せ、先生??」

私は目を丸くしてその光景をただ見ていた

「美味いな。
冴は料理上手だ。」

そう言って汚れてない手で
私の頭を優しく撫でる


その瞬間
胸がなぜかこみ上げた

「食べれないって…
食べれないって言ったのに。」


「食物は食べれないって言ったけど。
冴の気持ちはちゃんと味わったよ…。

ご馳走様。
ありがとう。おいしかった。」


私はそのまま先生の胸に飛び込んだ

「先生…
先生…大好きだよ。


大好き。」


「ありがとう。

俺も…好きだよ。」

先生が私を抱きしめ返した
いつもは冷たい先生の吐息が
今日は…

「卵焼きの香り…」

クスッと笑って先生は
「まいったな。」
って小さく微笑んだ

二人で笑った

お弁当は先生が半分も食べてくれた


それだけで
私は十分に幸せ
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