Blood Smell
私は先生の近くに行くと


ブラインドは自動的に上に上がっていった
窓から見える
街を見下ろす景色に釘づけになる

窓に駆け寄る

二畳くらいのベランダがついていた

「出てもいい?」

「いいよ。」

私は窓の鍵を開けてベランダに出る
森の香り
潮の香り
鳥の声

全てが美しく
静かで日差しが心地いい

「今日はいつもよりも可愛いな。」

先生がスッと私の肩を組んだ
日差しが先生に当たる

「!!先生、太陽に当たっちゃッ…」

先生を見た瞬間に唖然とした
先生の体は
着ている服以外がキレイに透けていた

手を透かすと
先生の手を通って日差しが私に当たる

「これが俺たちが日差しの下に出ない理由。」

先生の顔もうっすら透けて
後ろの部屋が見える

「…怖い?」

私は先生の透ける手を握った
握った感触はいつもと変わらない

「…燃えちゃうんじゃなくて良かった…。」

その手を頬に当てた
冷たい感触
でもこの冷たさが好き

「たとえ、燃えて灰になっても
冴の隣でこうしてるから。」

先生に寄り添いながら
「そんな事になったら
私は頭がおかしくなっちゃうかも?」

先生は笑った

ねぇ、先生
私の為に
命を粗末にしないでね

不死身なのかもしれないけど
怪我とかすぐに治るのかもしれないけど

私の為に死ぬより
私と共に歩く未来を望んでほしいな


でも
棺おけで寝てなくて
骸骨もなくて
蝋燭もなくて

本当に良かった…
< 76 / 303 >

この作品をシェア

pagetop