Blood Smell
先生の部屋で
私はソファーにうなだれた

「う~~~…苦しい。」

先生はクスクス笑って
私の前に薬をおいた

「食べ過ぎの薬。
母さんが持っていけってさ。」

「薬?
ヴァンパイアも薬飲むんだ?」

「飲まないよ。
母さんは薬剤師。病院に勤めてるんだ。」

「薬剤師??」

私は飛び上がった

「ヴァンパイアは
医療を職業にしちゃいけないか?」

先生が私のおでこを小突く

「イタッ…。違います。
でも、病院って血を間近に見るのに…。」

「そのことなら
俺たちは大丈夫だ。」

「大丈夫??」

「そう。
俺たちの主食は血だけど
俺の家族は人間の血は飲まない。」

「え?」

先生のブロンド美女に噛み付くビジョンが消えた

「ヴァンパイアにも二種類ある。
一つは純血のヴァンパイア。
何千年も続いてきたヴァンパイア一族の
王族みたいなものだ。」

私は必死で話についていく

「もう一つは混血のヴァンパイア。
初めは人間だったヴァンパイアだ。」

先生が淡々と語る事の裏に
恐ろしい出来事があることを直感で理解できた

でも
きっと先生は言葉を選んでいるんだと思う

「俺たちの家族は後者。
俺の爺さんはもともとは人間だった。
で、婆さんは前者の純血だった。

親父はその子供だから純血に近い混血。
母さんも親父と同じ純血に近い混血。」

「じゃあ、先生は…?」

「混血。
今じゃ純血のヴァンパイアは
俺たちの半分もいない。

混血のヴァンパイアは人間の血じゃなくても
生きていける。

だから
俺の家族は動物の血を主食としているんだ。」

ほっとしたような
複雑な気持ちになった
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