Blood Smell
ツーっと血があふれだす
そして
腕をつたう


バッッ!!


先生が一瞬にして私から遠く離れた

冷気から解き放たれた私の体はよろめく


たった数センチの傷

それでも
辺りには錆びた鉄のような匂いが香る


バラの香りでも消せない


私は傷口をきつくハンカチで縛る


そして
腕を袖で隠した


「先生?
もう、大丈夫ですよ?」

私は
宙にむかって話しかけた


バラの植え込みの所から先生がやって来た

ゆっくり
慎重に私に近づく


手を伸ばせば触れられる距離で立ち止まる

「…―すまない。
大丈夫か?」


緊張している先生
なぜか
切なそうに私のうでをみる

私は
腕を体で隠した
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