Blood Smell
先生の部屋で私は小さく膝を抱えていた


あれがヴァンパイア…
先生の時はあんなに恐怖感は感じなかった


ううん


感じなかったんじゃない

先生はあのとき
自分の姿を半分も出してなかったのかも…


だとしたら
先生も…
あんな風に人間を威嚇して
声をあらげて
私たちを―…


先生を見上げる
先生の瞳に写る私の顔

「どうした?」

先生は微笑んだ


私はそっと先生の冷たい頬に触れる


柔らかく
すべてを撥ね返すような強靭な肌


唇をなぞる


さっきは
ここから恐ろしい牙がはえていた…


「先生…

先生は私の血を吸いたいですか?」


私の質問


その質問は先生の空気をいっそう冷たくした
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