人心は、木漏れ日に似る
不意に、暗がりに生えた周りの木々が不気味に見えてきて、海里は、そのまま冬乃を置いて帰りたい衝動に駆られていた。


だが。

「よかったね、冬乃ちゃん!

ね、それ見せてくれない?」

「ん、いいよ!」


ほのみの、すっとぼけた明るい声が聞こえて、海里は顔をうつむける。

海里には、どうしてほのみが冬乃と平気で話せるのか、分からなかった。


ほのみが優しい人だということは、海里にも分かる。

ただ、その優しさを、冬乃なんかに振りまいてほしくなかった。


「そろそろ帰りましょうか。

江上さん、班の人に迷惑を掛けたんだから、帰ったら謝りなさい」

「えー、だって私、悪くないのに」

「でも、謝った方がいいよ!
私も一緒に行くから、ね?」


ほのみの声も、冬乃の声も、日暮れ後の闇に遮られたように、遠かった。



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