人心は、木漏れ日に似る
海里は、まるで毛皮のようにほこりが積もった机の引き出しに、手をかける。

ずいぶん長い間、そのままになっていたのだろう。
開けようとすると、ぎしぎしと盛大にきしんだ。

「うわぁ、俺、その音やだ」

将樹は耳をふさごうとしたが、手がほこりまみれなことに気がついて、やめた。


「海里、なんか入ってたか?」

将樹が部屋をのぞき込むと、わずかに開いた引き出しから、海里が何かを取り出したのが見えた。

「なんだ、それ」

「指輪」

海里は、取り出した指輪のほこりをはたく。

引き出しにしまわれていたため、机上と比べれば、ほこりはさほどひどくはなかった。


「……その指輪、なんか意味あんのか?」

将樹が聞くと、海里は、ないだろうな、と即答した。

「勘弁してくれ。

俺は早く出たい」

愚痴を言う将樹を尻目に、海里は指輪をポケットへ入れた。



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