人心は、木漏れ日に似る
丘の頂上は、風が強い。

海里は、風で暴れる前髪を手で押さえ付けて、眼下の景色を見渡す。

細くうねる川は長く、流れも速そうだ。
橋は見当たらない。


どうやって渡ろうか、と海里は思案するが、背後では、秋川サワと畑みかげの談笑が盛り上がっている。

高いはしゃぎ声が、風にさらわれながらも、海里の耳へ届いた。

――面倒事を他人に押し付けておいて、いい気なものだ。

海里はそう思い、少しやる気を無くした。

海里が、ちらりと背後を振り返ると、西城将樹も談笑の輪に入っていた。

どうやら話題は、秋川サワの髪が風に煽られていることらしい。

「もう、最悪」

「サワさぁ、それホラーだよ」

「サワちゃん、髪長いもんな。

みかげちゃんみたく、三編みなり結ぶなりすれば、可愛いしイケるんじゃね?」

「将樹うっさい。

あんたの趣味で、髪型決めてるわけじゃないし」



どうでもいい話題。

海里はうんざりして、なだらかに続く丘の、尾根を見つめた。

そうすれば、眼下の川もサワ達も見ずに済む。

サワ達が、やる気になってせっつきに来るまで、海里はとりあえず何もしないことにした。



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