人心は、木漏れ日に似る
海里の周囲に、音が戻る。

――池、か。

そんなこともあったな、と海里は思う。


例え、池や川に突き落とされようと、今の海里は、愛想笑いをする気にはなれなかった。

雑談や人付き合いは、海里にとっては無意味。

労力をかける価値など無かった。



ふいに、サワの甲高い声が響く。

「海里ぃ!」

振り向こうとして、海里は足を上げた。

途端、海里の足が、水流に搦め捕られる。
軸足が、川底を滑った。

急速に水面が近付く。

――ああ、あの時と同じだ。


「あの、バカッ」

「海里ぃい!」


みかげと将樹の声が、鋭く割り込む。

――あの時は……もっと、静かだった。

かすかな違和感を覚えながら、海里は川へ倒れ込んだ。

無音の水中。

膝丈の深さとはいえ、流れが速い。

為す術も無く流されながら、海里は川面から顔を出した。

みかげの怒声が、海里の濡れた耳を叩く。

「海里!手!」

流されながら、海里は声のする方を向いた。

びしょ濡れの畑みかげが、海里に手を差し出している。



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