人心は、木漏れ日に似る
海里は歩き続ける。

海里の視界を遮る、両脇の崖は、徐々に低くなっていった。

崖上にあった、柔らかな草の生える茶色の地面が、砂利だらけの河原と同化する。

海里は、周りの景色が、丘の見える、足を滑らせた時の景色と近くなっていく様子を、黙って見ていた。

――僕は、皆を丘へ置いて、川へ入った。

――皆が僕を置いて、先へ行ったとしても、文句は言えない。

それでも構わない、と海里は思う。


海里は内心、みかげの手を呆然と見たことに、驚いていた。

海里は、川の流れをなめていて、足を滑らせても、自力で立てると思っていたのだ。

だから、助けを呼ぶ気も、助けてもらう気も無い。

当然、みかげの手を、払いのけても良かったのだ。


だが実際は、海里はみかげの手を見送るに留まった。


うるさい、と他者との関わりを避け、全員から背を向けられた海里にとって、演技でなく他人を拒否しなかったのは、

初めての経験だった。



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