人心は、木漏れ日に似る
海里は、小さく口を開く。
小さいのは、保身のためだ。

ここで、女生徒と親しそうに話したら、海里が白い目で見られる。
今後の合同合宿に支障が出る。

「お前さ、そんなこと言って、思い通りになると思ってんの?」


すると、セミロングの女生徒は、髪を振り乱すようにして叫んだ。

「私が来てって言ってるのよ!

なんで来ないのよ!!」


女生徒の苛立ちが、川を越えて海里に届く。

海里は、後ろをうかがう。


班員達は、至って静かだ。

いない振りをするみかげ、目をそらすサワ。

退屈そうな将樹、うつむく平子。

……どうする気なんだ、と海里は思う。

黙って、黙りこくり続けても、結局誰かが何かしない限り事態は打開しない、と、海里には分かり始めていた。

言い返す言葉も、無視して立ち去る意志も、班員達は放棄している。



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