人心は、木漏れ日に似る
海里達がぼそぼそと話していると、突然、罵声が響いた。


「バカ!」


対岸の女生徒が、足を踏み鳴らしている。

川原の石が、跳ねた。


「とろいのよ、あんた達!

なんですぐに来ないのよ、どんだけわがままなの!?

最悪ー!

もう、あんたなんか邪魔なだけよ、全然言うこと聞かないし。

さっさと消えれば?
私、たった一人でやるわよ」


思い付く限りの悪態をつき、聞き取れないほど声をからし、女生徒は対岸の林へ姿を消した。


嵐のような、数秒間だった。

班員達は全員、理不尽な罵詈雑言に見舞われて、怒り方すら分からずにいた。


「……あの子、バカ?」

サワが、実感を込めてつぶやく。

「バカだよ」

短く、みかげが答えた。


2人が思いを代弁したことによって、海里はようやく我に返る。


「……渡るか。

今なら、あいつはいない」



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