ただ今、政略結婚中!
「早く入れ」


玄関に入った私の頭にタオルがかけられた。


部屋を濡らさないようにその場で水滴を拭きとると、部屋へと足を踏み入れる。


隼人さんは腕を組み、私の行動を逐一見ていたようで、部屋に入ると口を開いた。


「ったく、公園だって?何時間いたと思っているんだ?」


「時計は持っていかなかったからわかりません」


部屋を出たのが11時頃だったのを覚えている。


部屋の時計を見ると15時を回っていた。


「雨が降っているのに公園にいたのか?本当にバカだな」


冷たい言葉に思わず涙ぐみそうになる。


「違います、道がわからなくなったんです」


お腹もすいたし、寒いし、疲れ切っていたから口論は嫌だった。


「本当のバカだな。土地勘がないのに何も持たずに出るとは」


それは歩き回りながら何も持たずに出て後悔したと思っていた。


でも彼にバカにしたように言われるとムカつく。


反論をしようと口を開くと、派手なくしゃみが出てしまった。


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