ただ今、政略結婚中!
「あ、あの……」


まだ話せないでいる私は、ドアに手をかけた隼人さんを思わず呼び止めていた。


どうしよう……。


エステルのこと、言わなきゃ。



「なんだ?」


振り向くと、問いかけるように片方の眉を上げて私を見る。


少し苛立っているようなそんな顔で「なんだ?」と言われ、私は話しづらい雰囲気に言いだせなくなる。


「あの……今日はお買い物に行ってきます」


「あぁ、気をつけるように。路地には入るなよ」


それだけ言うと行ってしまった。


言えなかった……。


どっと脱力して、その場に座り込む。


隼人さんの反応が怖くて言えなかった……。


先延ばしにしちゃうのは私の悪い癖だ……。


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