ただ今、政略結婚中!
玄関に入ると、私の口から思わずため息が吐いて出た。


白とブラウンを基調としたバリ風のインテリアの美しさに感嘆のため息。


大きく開け放たれた窓の向こうから複数の男女の声が聞こえる。


籐づくりのブラウンのソファにはモデル風の女性とひげを生やした男性が座り、ワインを片手に話をしている。


男女ともフォーマルなドレスやスーツに身を包み、容貌から一般人に見えない。


有名スターも来るって言っていたから、芸能関係の人が多いのかもしれない。


本当にお門違いの所へ来ちゃったみたいだ。


『キミはエステルの友達?』


「は、はい」


まだ肩に手を置いたままの俳優さんに聞かれて頷く。


顔を彼に向けた隙に、彼の手から抜け出す。


『プールサイドにいるんじゃないかな』


プ、プール……。


別荘にはつき物だけれど。


本当にすごい別荘……って、ここは別荘?他にも家があるってこと?


さすが、世界のスーパーモデルだけあるな……。


そんなことを考えていたら、今度は彼の腕が腰に回った。


えっ?


腰に触れられた途端、ビクッと肩が跳ねてしまう。


今まで異性に抱き寄せられたことなんてないから、身体が過剰に反応する。


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