ただ今、政略結婚中!
『へえ。こうされることに、慣れていないのか。キミは可愛い人だね』


頭の上から降ってくる言葉は何を言っているのかわからない。


にっこり微笑む彼はスターのオーラがいっぱいで、夢の中にいるんじゃないかと思ってしまうほどだ。


ハリウッドスターに腰を抱かれているなんて、ファンなら死んでもいいくらいに喜ぶと思うけど、ファンじゃない私は腰に置かれた手をすぐにでも外して欲しいくらいだった。


身体をずらしても彼の手は腰に置かれたまま。


仕方なく身を固くしながら奥へと進んだ。


少し行くと、私は本日2回目の感嘆の声をあげずにはいられなかった。


プールの中が七色にライトアップされてきれいだった。


プールサイドにはシェフらしき服装の人が2人いて、食欲をそそる匂いのするお肉を焼いていた。


お客様の間を縫うように歩いているのは給仕係の男性も数人いる。


『ハニー!エステル!』


隣の俳優さんがエステルを見つけて大きな声で呼んだ。


ハ、ハニー……。


彼は私の腰から手を外し、目指すハニーへと近づいていく。


彼女のドレス姿を見て、口が開いたままになるほど驚いた。


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