ただ今、政略結婚中!
「寒いのか?」


隼人さんの視線がエステルから私に移り聞かれる。


「ぁ……」


寒い、そうなのかもしれない。


隼人さんのジャケットに包まれているのに、寒くて仕方ない。


『ハヤト!行かないで!』


エステルの横を通り過ぎる隼人さんの肩に手を伸ばし引き留める。


驚いて顔を彼女に向けたけれど、彼女は私なんて眼中なく、宝石のようなグリーンの瞳で隼人さんを見つめている。


『君には愛想が尽きた』


そう言うと、エステルにかまわずに隼人さんは歩き出した。


なにがあったのかわからないけれど、隼人さんの口調は愛する人に話すような感じではなかった。



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