ただ今、政略結婚中!
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ベッドの上で起き上がってみると、頭がまだくらくらした。


熱が高く起き上がれる状態じゃないことがわかった。


「起き上がるんじゃない」


隼人さんの声に驚いて顔を上げた。


「もう大丈夫です」


厳しい顔で隼人さんは近づいてきて、私の額を軽く押す。


「強がるのはやめろ、まだひとりでトイレにも行けないはずだ」


「ト、トイレぐらいひとりで行けますっ!」


「熱が高いんだ。無理をするな」


口調は優しくて、私を見る眼差しは暖かく感じる。


どうしてそんな目で見るの……?


優しくしないで欲しい。


あなたにはきれいな恋人がいるのだから……。


ふたりのことを考えたら、ぎゅうっと鷲掴みされるように胸が痛んだ。


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