ただ今、政略結婚中!
彼は出勤する前の忙しい時間に寝室に現れ、必要なことしか話さない。


何が食べたいとか、何を飲みたいとか、必要なものはあるかとか。


私の答えもぎくしゃくしたもので、お寿司、チャーハン、パンなどと、簡単な言葉を返す。


妙に意識をしてしまって顔をちゃんと見られないのだ。


『俺の気持ちがどこにあるのか知りたいのか?』


隼人さんは聞いたけれど、勇気がなくて聞けなかった。


エステルを……彼女を愛しているって言われたら立ち直れない……。


だからいつか聞くであろう隼人さんの答えを引き伸ばしてしまった。


今回のことに関して、迷惑をかけてしまっているのは十分承知していたので、隼人さんが起きていいと言うまで大人しくベッドにいた。


今朝、熱を測った後にベッドから出て良いと言われたのだ。


だけど、もう一度眠ってしまって、起きたのはお昼を過ぎていた。


******


ダイニングキッチンに入ると、テーブルの上の紙袋が目に入る。


「お弁当だ……」


ヘンリーが持ってきてくれたに違いない。


開けてみると、リクエストしていた中華料理だった。


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