ただ今、政略結婚中!
蓋を開けたら良い匂いが漂ってお腹が鳴りそうだ。


イスに座って食べ始めようとした時だった、下腹部に知っている痛みを覚えた。


え……?


急いでお手洗いに駆け込んだ。


赤いものを見て涙がみるみるうちに溢れ出て止まらなくなった。


あと数日後の生理予定日だったのに……。


赤ちゃん、いなかった……。


こんなにショックを受けるとは思ってもみなかった。


「赤ちゃんは私と隼人さんとの唯一のつながりだったのに……」


目が真っ赤に腫れるくらいに泣いても、悲しみは消えなかった。


******


夕方、私のお気に入りの場所、公園に来ていた。


家にいると気が滅入って仕方なかったから。


ゆっくりと歩いている私はいつの間にか子供を目で追ってしまっている。


ベビーカーを押す若いお母さんの姿を見て、立ち止まってしまう。


胸にどっと押し寄せる悲しみに、また涙腺が緩んできた。


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