ただ今、政略結婚中!
「カフェでデートか?ジョンはやめろと言っただろう?」


「えっ?」


ジョンの名前を出されて驚いた。


「やめろって、ただお茶をしただけです」


別にジョンに特別な感情があるわけがない。


隼人さんに誤解されないように説明したかった。


「それはわかっている」


隼人さんは淡々と答えた。


「ジョンに近づくな」


「そんなこと言っても……いつもばったり会っちゃうんです」


正直に言うと、隼人さんはなぜか疲れたようにため息を吐いた。


不機嫌そうだった瞳は和らいで見えて、私はホッとした。


「もう少しまともな服に着替えるんだ」


「えっ?」


次に何を言われるのか予測できない。


小首を傾げて聞き返すと、隼人さんがポケットから紙を取り出しちらつかせた。


何かのチケットらしいけど……。


「ミュージカル、観たかったんだろう?」


次に口にした隼人さんの言葉に、舞い上がりそうなほど嬉しかった。


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