ただ今、政略結婚中!
「起きないのならお前の身体を好きにしていいんだな」


耳元で囁かれた言葉に、一瞬にして覚醒してガバッと起き上がった。


「な、なにを言っているのっ!」


反射的に枕を持ってベッドの上に立って隼人さんを見る。


「これからウエルカムパーティーだ。ドレスに着替えろ」


「ウエ、ウエルカムパーティーって?」


「ホテル側が歓迎のパーティーを開いてくれるんだ」


隼人さんはブラックフォーマルのスーツをすでに着ている。


パーティーにふさわしいドレスなんて持ってきていない。


「私、ドレス持ってきてないです!」


持ってきていないんじゃなくて、唯一日本から持ってきたドレスはびしょ濡れのままエステルの家に置いてきてしまった。


もう捨てられているに違いない。


「まったく、俺の妻ならばそれぐらい用意しておけ」


隼人さんは舌打ちすると、寝室を出て行った。


怒っちゃった……?


私は隼人さんを慌てて追いかけた。


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