ただ今、政略結婚中!
思いがけず、優しいキスに応えていた。


舌が絡まりあい、まだ昼間飲んだお酒が残っているのかと思うほど理性は取り払われ、彼のキスに夢中になった。


バスローブが私の手から離れたことも、ブラジャーが外されたことにも気づかなかった。


隼人さんの吐息が耳に触れ、乳首を指の腹で撫でられビクッと身体が震える。


「っあ……」


胸に触れられたことで、我に返りあられもない自分の姿に目を見開いてしまう。


「ぁ……」


そして目の前の隼人さんの撫でつけた髪が乱れていた。


隼人さんの髪を乱したのは私……。


「そのドレスにブラジャーはいらない」


隼人さんは私から離れると、何も言えない私に羽のように軽いドレスを渡した。


「化粧は口紅を塗りなおすだけでいい」


そう言って部屋から出て行った。


颯爽とした後姿を見つめる私の胸は締め付けられるように痛かった。


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